厚生労働省の「介護保険事業状況報告」からみる介護の今

厚生労働省では、保険者(市町村等)から報告を受けて、介護保険事業の実態状況を集計しています。最新(平成29年9月分)の「介護保険事業状況報告 月報(暫定)」は、平成29年12月5日に公表されました。


今回は、そのなかから「要介護(要支援)認定者数」と「居宅(介護予防)サービス受給者数」の数値をみていきます。(※暫定版であるため、数値は今後変更があります。)

「介護保険事業状況報告」とは

「介護保険事業状況報告」とは

「介護保険事業状況報告」とは、厚生労働省が、保険者(市町村等)から報告を受けた介護保険事業の実態状況(要介護認定や保険給付の状況)を集計したものです。

統計の目的

「介護保険制度の施行に伴い、介護保険事業の実施状況を把握し、今後の介護保険制度の円滑な運営に資するための基礎資料を得ること」を目的としています。

統計の対象

介護保険を運営している保険者市町村特別区〈広域連合を設置している場合は広域連合〉)が対象です。

主な集計事項

・第 1 号被保険者数
・要介護(要支援)認定者数
・居宅(介護予防)サービス受給者数
・地域密着型(介護予防)サービス受給者数
・施設サービス受給者数
・保険給付 介護給付・予防給付 総数(給付費)
・保険給付 介護給付・予防給付 居宅(介護予防)サービス(給付費)
・保険給付 介護給付・予防給付 地域密着型(介護予防)サービス(給付費)
・保険給付 介護給付・予防給付 施設サービス(給付費)
・保険給付 特定入所者介護(介護予防)サービス費 総数(給付費)
・保険給付 高額介護(介護予防)サービス費 総数(給付費)

第1号被保険者とは

介護保険の被保険者は、「第1号被保険者」と「第2号被保険者」があります。

第 1 号被保険者とは、原則として市区町村内に住所がある65歳以上の方を指します。平成29年9月末現在の第 1 号被保険者数は、3,466万人(65歳以上75歳未満 1,749万人、75歳以上 1,717万人)となっています。

ちなみに、第2被保険者とは、原則として市区町村内に住所がある40歳以上65歳未満の医療保険加入者の要介護認定者数を指します。

要介護(要支援)認定者数

要介護(要支援)認定者数

要介護(要支援)認定者数とは、要支援または要介護(要支援1~要介護5)と認定された方の人数です。

平成29年9月末現在の第1号被保険者および第2号被保険者の要介護(要支援)認定者数は640.7万人です。そのうち男性は200.4万人、女性は440.3万人となっています。

第1号被保険者の総数は627.4万人、そのうち65歳以上75歳未満の方は74.9万人、75歳以上の方は552.4万人となっています。


要介護(要支援)認定者数(人)

区分 総数
第1号被保険者 6,274,743
    65歳以上75歳未満(前期高齢者) 749,761
    75歳以上(後期高齢者) 5,524,982
第2号被保険者 132,516
合計 6,407,259

要介護(要支援)認定者割合(第1号被保険者数に対する65歳以上の認定者数の割合)は、約18.1%(全国平均)です。[平成29年7月末実績]

第 1 号被保険者1人あたりの保険給付費は、23,159円(全国平均)となっています。[平成29年7月サービス分]

居宅(介護予防)サービス受給者数

居宅(介護予防)サービス受給者数

介護保険サービスは「居宅サービス」「地域密着型サービス」「施設サービス」の3つに大別されます。ここでは、「居宅サービス」の数値についてみていきましょう。

居宅サービスとは

居宅サービスとは、在宅で受けられるサービスです。ご自宅のほか、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅も「居宅」に含まれます。

居宅介護(介護予防)サービスは、要支援1・要支援2、要介護1~5と認定された方が利用できます。介護予防・日常生活支援総合事業を利用できるのは、要支援1・要支援2の方です。

居宅サービスの基本(3本柱)は、「訪問介護(ホームヘルプ)」「通所介護(デイサービス)」「短期入所生活介護(ショートステイ)」です。

居宅サービスの受給者数

居宅(介護予防)サービス受給者数は、379.2万人となっています(現物給付7月サービス分、償還給付8月支出決定分)。主なサービス別(訪問介護・通所介護・短期入所生活介護)の受給者数は以下の通りです。


●訪問介護(ホームヘルプ)

訪問介護員(ホームヘルパー)が居宅を訪問し、食事・入浴・排せつなどの介護や生活援助を行うサービスです。訪問介護サービスの受給者数は、112.6万人となっています。


●通所介護(デイサービス)

デイサービスセンター等へ通い、食事・入浴などの支援や生活機能訓練などを日帰りで受けるサービスです。通所介護サービスの受給者数は、130.9万人となっています。


●短期入所生活介護(ショートステイ)

短期入所生活介護事業所等に短期間宿泊し、食事・入浴などの支援や機能訓練などを受けるサービスです。短期入所生活介護サービスの受給者数は、33.3万人となっています。


「介護保険事業状況報告」について詳しくは、厚生労働省のホームページをご覧ください。

厚生労働省・介護保険事業状況報告 月報(暫定版) 

数字からみる高齢化の状況

数字からみる高齢化の状況

超高齢社会を迎えた日本では、総人口が減少するなかで高齢化率(65歳以上の人口が占める割合)が上昇しています。

介護保険制度がスタートした 2000 年の高齢化率は、17.3%でした。しかし、2016年の高齢化率は、27.3%(約1.6倍)になっています(総務省「人口推計」平成28年10月1日確定値)。今後も高齢者数は増加していき、2025年には30%を超える見込みです。


さらに、2065年には高齢化率が38.4%にまで達し、約2.6人に1人が65歳以上になると推計されています。つまり、現役世代(15~64歳)1.3人で1人のご高齢者を支える社会になるということです。(内閣府「平成29年版高齢社会白書」)


また、65歳以上のご高齢者のなかで、75歳以上の伸びが目立っています。75 歳以上になると、介護が必要な方の割合は大幅に上昇します。上記の要介護(要支援)認定者数をみても、後期高齢者(75歳以上)は、前期高齢者(65歳以上75歳未満)の7倍以上です。推計では、2065年に75歳 以上人口が総人口の25.5%(約4人に1人)になるとされています。



今後はご高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯が増え、認知症の方も増加していく見通しです。団塊の世代(約800万人)が75歳以上となる 2025年には、介護・医療のニーズはさらに高まることが予測されます。介護保険制度は見直しが進められており、自立支援・重度化防止に向けた取り組みや地域包括ケアシステムの構築などを推進しています。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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