現在、国は「介護離職ゼロ(ご家族の介護のために離職する人をゼロにするための対策)」に取り組んでいます。その取り組みの一つとして挙げられるのが「介護休暇」と「介護休業」です。育児休業と比べると、まだまだ浸透しているとはいえない状況ですが、上手に利用することで仕事と介護を両立しやすくなります。
今回は、「介護休暇」と「介護休業」の違いや介護休業給付の活用法、注意点について解説します。
「介護休暇」とは

「介護休暇」は、「育児・介護休業法」によって定められた制度の中にあるひとつの仕組みです。働いている人のご家族の中に「要介護状態」の方や、介護サービスの手続きや病院の付き添いなどのお世話が必要な方がいる場合に、休暇を取得することができます。
介護休暇は、1年間につき5日間、介護が必要なご家族が2人以上の場合は1年間につき10日間を限度として、1日単位や半日単位での取得が可能です。
ただし、半日単位で取得することが難しい業務についている方や1日の所定労働時間が4時間以下の方は、半日単位での介護休暇を取得することができない場合があります。
雇用されている労働者であれば活用できる制度ですが、日雇労働者は活用することができません。また、入社して6ヶ月を経過してない労働者や1週間の所定労働日数が2日以下の労働者については、取得できないことがあります。
取得できる日数等を拡充している企業(会社)もありますので、詳しくはお勤め先に確認するようにしましょう。
「介護休業」とは

「介護休業」も介護休暇と同じく、「育児・介護休業法」によって定められています。
働いている人のご家族の中に、「要介護状態」の方がいる場合、対象家族1人につき、通算して93日まで、また3回まで取得することができるという制度です。
ただし、入社して1年を経過していない労働者や介護休業を申請する日から93日以内に退職する予定の労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者については、活用することができないことがあります。お勤め先に確認するようにしましょう。
介護休暇・介護休業を利用するための「要介護状態」とは

介護休暇・介護休業は、原則として対象家族が「要介護状態」である場合に利用できます。
「要介護状態」とは「負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」をいいます。
上記を見ると、介護保険制度の要介護・要支援認定を受けた方というわけではありません。要介護・要支援認定を受けていない場合でも「常時介護を必要とする状態」であると認められれば取得が可能です。
以下(1)または(2)のいずれかに該当する場合は、介護休業制度を活用することができますのでご確認ください。
(1) 介護保険制度の要介護認定を受けている人で要介護2以上であること。
(2) 以下の状態①~⑫のうち、2が2つ以上ある、または3が1つ以上ある場合で、かつ、その状態が2週間以上の期間にわたって継続すると認められること。
「常時介護を必要とする状態」の判断基準
1 | 2 | 3 | |
---|---|---|---|
①座位保持(10分間一人で座って いることができる) |
自分で可 | 支えてもらえればできる | できない |
②歩行(立ち止まらず、座り込ま ずに5m程度歩くことができる) |
つかまらない でできる |
何かにつかまればできる | できない |
③移乗(ベッドと車いす、車いす と便座の間を移るなどの乗り移り の動作) |
自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
④水分・食事摂取 | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
⑤排泄 | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
⑥衣類の着脱 | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
⑦意思の伝達 | できる | ときどきできない | できない |
⑧外出すると戻れない | ない | ときどきある | ほとんど毎日ある |
⑨物を壊したり衣類を破くことが ある |
ない | ときどきある | ほとんど毎日ある |
⑩周囲の者が何らかの対応をとら なければならないほどの物忘れが ある |
ない | ときどきある | ほとんど毎日ある |
⑪薬の内服 | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
⑫日常の意思決定 | できる | 本人に関する重要な意思決定は できない |
ほとんどできない |
出典:厚生労働省 育児・介護休業制度ガイドブックhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h27_12.pdf
「対象家族」の範囲とは

介護休暇・介護休業の「対象家族」は、育児・介護休業法で次のように定められています。
「配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹および孫」
※介護関係の「子」の範囲は、法律上の親子関係がある子(養子を含む)のみ
対象となるご家族については、同居や扶養が要件とはなっていません。(※2017年10月1日の改正により、「祖父母、兄弟姉妹、孫についての同居・扶養要件」は無くなりました。)離れた場所に住んでいるとしても、扶養していないとしても、介護休暇や介護休業の取得は可能です。
「介護休業給付」とは

ご家族の介護のために仕事を休むと、事業主に給与を支払う義務がないため、原則としてお給料は支払われません(お勤め先によっては支給される場合があります)。
そこで利用したいのが「介護休業給付金制度」です。「介護休業給付」は、介護費用がかかる上に無給になるという状況を救うための所得保障の一つです。
雇用保険の被保険者(一般被保険者および高年齢被保険者)の方が、要介護状態の対象家族を介護するために介護休業を取得した場合、一定の要件を満たすと介護休業給付の支給を受けることができます。
介護休業給付の支給額
各支給対象期間(1か月)ごとの支給額は、原則として「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です。支給は93日を限度に、3回までに限ります。
介護休業給付は非課税で、無給であれば所得税や雇用保険料は控除されません。
介護休業給付の手続き
事業主が、事業所の所在地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に「介護休業給付金支給申請書」と「休業開始時賃金月額証明書」を提出する必要があります。
「介護休業給付」について詳しくは、お近くのハローワーク(公共職業安定所)へお問い合わせください。
法律によって定められた「介護休業制度」は、お勤め先の就業規則に記載されていなくても利用できる制度です。正社員の方だけではなく、契約社員やパート、アルバイトの方も要件を満たせば介護休業を取得することができます。 働きながら無理なく介護を行うために、「介護休暇」や「介護休業」を上手に活用しましょう。
特別養護老人ホーム責任者、居宅介護支援事業所の管理者を経て、現在、介護コンサルタントに取り組んでいます。 主任介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士を取得しています。
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