薬剤耐性菌感染症とは?薬剤耐性菌を増やさないためにできること

抗菌薬(抗生物質)の効かない「薬剤耐性菌」の増加が大きな問題となっており、感染症の予防や治療が難しくなるケースが増えています。ご高齢者は感染症にかかると重症化のリスクが高いため、特に注意が必要です。今回は、薬剤耐性菌感染症の基礎知識や薬剤耐性菌を増やさないためにできることをお伝えします。

薬剤耐性(AMR)とは

薬剤耐性(AMR)とは 薬剤耐性(やくざいたいせい)とは、特定の種類の抗菌薬((抗生物質)が効かない、または効きにくくなることです。抗菌薬への耐性を持った細菌のことを「薬剤耐性菌」といいます。

細菌が体内に入って病気を引き起こした場合は、処方された抗菌薬(抗生物質)を飲んで治療します。
しかし、抗菌薬は不適切な使い方をすると、病原菌だけでなく体の中にもともと住んでいる害のない細菌も排除して、「薬剤耐性菌」だけが生き残ってしまうことがあるのです。
体の中に薬剤耐性菌が増えて抗菌薬が効かなくなると、感染症の治療が難しくなり、重症化や死亡のリスクが高まります。

主な薬剤耐性菌

・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
・多剤耐性緑膿菌(MDRP)
・基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科細菌
・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)
・多剤耐性アシネトバクター(MDRA)
・バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)

薬剤耐性菌を増やさないためにできること

必要のない抗菌薬を飲まない・希望しない

感染症には、細菌によって起こる病気とウイルスによって起こる病気があります。
抗菌薬(抗生物質)は細菌に効く薬で、ウイルスが原因の病気には効果がありません。
ウイルスが原因であるインフルエンザや風邪などのときは、自ら抗菌薬の処方を希望しないようにしましょう。
また、抗菌薬を他人にあげること、他人からもらうことは控えましょう。

処方された抗菌薬は医師の指示どおりに飲む

抗菌薬(抗生物質)を処方された場合は、医師の指示どおりに飲みましょう。
症状が軽くなっても、勝手に服用を途中でやめたり、量や回数を減らしたりしないことが大切です。

感染症を予防するためにできること

感染症を予防するためにできること 感染症から身を守ることも、薬剤耐性の予防につながります。

手洗いの習慣化
感染経路を遮断するために、正しい手洗いやアルコール消毒を心がけましょう。

ワクチン接種
感染症にはワクチンで予防できるものもあります。必要なワクチンを接種して感染症にかからないようにしましょう。

咳エチケット
感染症を他の人に感染させないために、咳や鼻水、くしゃみが出るときはマスクを着用します。
とっさのときは、ティッシュやハンカチ、上着の内側や袖で口と鼻を覆いましょう。

介護現場での感染対策

標準予防策(スタンダード・プリコーション)の徹底
感染症の有無に関わらず、すべての方に対し、「血液、体液、汗を除く分泌物、排泄物、損傷した皮膚、粘膜などは感染の可能性がある」とみなして対応する方法を標準予防策(スタンダード・プリコーション)といいます。
薬剤耐性菌は分泌物や排泄物などに含まれていることが多いため、標準予防策を徹底することが重要です。

・ケアの際は手袋を着用する
・こまめな手指衛生(手洗い・手指消毒)を心がける
・必要に応じてマスクやゴーグル等をつける
・施設内・車両・福祉用具などを定期的に消毒する
・定期的に換気を行う
・咳エチケットを実践する など

手袋・エプロンなどの装着
ケアの際は、手袋、エプロンや長袖ガウンなどを着用します。使用後の手袋や物品(おむつ等)はすぐに捨てましょう。

手洗い・手指消毒
手袋を外した後は、石けんと流水で丁寧に手を洗い、手指の消毒を行いましょう。

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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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