日ごろの予防が大切!ご高齢者がかかりやすい感染症とその対策

抵抗力が低下しているご高齢者はさまざまな感染症にかかりやすく、感染すると重症化しやすい傾向にあります。ご高齢者と介護する方の健康を守るためには、予防と早期発見がとても大切です。今回は、ご高齢者がかかりやすい感染症の基礎知識や予防対策について解説します。

ご高齢者がかかりやすい感染症

ご高齢者がかかりやすい感染症


ご高齢者がかかりやすい感染症には、以下のようなものがあります。

新型コロナウイルス感染症

主要な感染経路は「飛沫(ひまつ)感染」や「接触感染」といわれています。感染すると発熱や呼吸器症状、倦怠感(強いだるさ)などがみられることが多く、ご高齢者は重症化リスクが高いことが報告されています。

インフルエンザ

インフルエンザウイルスに感染することで発症します。38℃以上の高熱や頭痛、関節痛、筋肉痛などの症状が突然現れるのが特徴です。免疫力が低いご高齢者がかかると重症化しやすく、肺炎や脳炎になることもあります。

肺炎

肺炎とは肺に炎症がおきている状態の総称です。ウイルスや細菌、真菌などさまざまな病原体によっておこります。肺炎の症状は咳や痰、悪寒、発熱、呼吸困難、胸痛などですが、ご高齢者にはこのような典型的な症状がはっきり出ないことがあります。また、加齢により飲み込む力が低下すると、誤嚥(ごえん)による肺炎をおこしやすくなります。

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結核

結核菌による慢性感染症です。多くの方は感染しても発症しませんが、高齢の方は発症しやすいと考えられています。
結核の症状は咳と痰(時に血痰や喀血)、発熱、寝汗、倦怠感、体重減少などです。しかしご高齢者では、全身の衰弱や食欲不振などの症状が主となり、呼吸器症状や発熱などを伴わないことがあります。また、過去に感染した方が免疫力の低下などにより発症することや再発することもあります。

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症)

黄色ブドウ球菌が薬剤耐性化したものがMRSAです。現在、院内感染が問題となっています。黄色ブドウ球菌は私たちの鼻の中や皮膚などにも住んでいる菌ですが、ご高齢者など免疫力の低下した方が感染すると治療が難しく重症化することがあります。

ノロウイルス

冬場の感染性胃腸炎の主な原因となるウイルスです。感染力が強く、集団感染をおこすことがあります。ノロウイルスは手指や食品などを介して経口で感染し、おう吐や下痢、腹痛、微熱などをおこします。通常はこれらの症状が1~2日続いた後に治癒しますが、高齢の方は重症化することがあります。また、おう吐物による窒息や肺炎にも注意が必要です。

疥癬(かいせん)

ダニの一種であるヒセンダニ(疥癬虫)が皮膚の角質層に寄生しておこる皮膚病です。介護施設や病院等での集団発生が問題になっています。通常の疥癬の主な症状は、手首や手のひら、指の間、おなか、太ももの内側などに出る赤いブツブツ(丘疹・結節)です。激しいかゆみを伴いますが、ご高齢者はかゆみの訴えが少ない場合もあります。重症型の角化型疥癬の場合は、手足、おしり、ひじ、ひざなどに角質の増殖がみられます。

感染症予防のポイント(生活習慣など)

感染症予防のポイント(生活習慣など)


感染予防のポイントを、日ごろからできることと感染者が発見された場合にすることに分けて説明します。

日常生活での予防

・手洗いとうがい
外出先から自宅や施設に帰宅した時、手洗いとうがいを行います。指や爪の間もしっかり洗いましょう。

・からだを清潔に
身体はもちろん、汚れがたまりやすい口の中や陰部の清潔も保つよう心がけましょう。

・十分な睡眠と栄養
体調を崩すと感染症に対する抵抗力が弱くなってしまいます。十分な睡眠と栄養をとるようにしましょう。

・予防接種
毎年流行するインフルエンザは、医師と相談のうえ予防接種を受けましょう。効果は接種後1~2週間ほどかかりますので、流行前に接種するようにしましょう。ご高齢者だけでなく、ご家族や介護者も接種するようにしましょう。

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感染経路とそれに沿った予防

・咳やくしゃみなどで飛んだ飛沫から感染する「飛沫感染」
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどは飛沫感染でも感染します。正しい手洗い、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保、こまめに換気などで感染を防ぎましょう。

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・触って感染する「接触感染」
通常の疥癬(かいせん)は皮膚と皮膚の接触で感染します。また、衣類や寝具などから間接的に感染することもあります。 新型コロナウイルス感染症やインフルエンザは、ウイルスがついた手で口や鼻、目などの粘膜を触れて感染することもあります。手洗いをしっかり行い、タオルなどの共有は控えましょう。

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・同じ空間にいることで感染する「空気感染」
結核は、結核菌を排菌している患者さんと同じ空間にいるだけで感染することがあります。症状が出にくい高齢の方は、定期的に胸のレントゲン検査を受けることが大切です。呼吸器症状や全身症状がみられる場合は、早めに医療機関を受診する必要があります。

介護者の感染予防対策

介護者の感染予防対策

手袋やエプロンの使用

介護の際に血液や体液に触れる可能性がある場合は、手袋やエプロンを使用しましょう。ご高齢者にひどい咳や痰の症状があるときなどはマスクをつけます。

手洗いやうがい

介護の前後の手洗いは徹底します。特に調理や食事介助をするときは、しっかり手洗いを行いましょう。手袋をつけてケアした場合でも、手袋をはずしたあとに必ず手洗いをします。ご高齢者が咳をしている場合は、介護者も念入りにうがいをしましょう。 ご高齢者の感染症を予防・早期発見するためには、日ごろから健康状態を観察し、小さな変化も見逃さないことが大切です。「いつもより寝ている時間が長いな」「食欲がないな」「声に元気がないな」など、普段と違う様子に気づいたら早めの受診を心がけましょう。

ライター:山下 優子
社会福祉士資格保有のライター。「介護」を中心とした福祉分野で、執筆活動を続けている。

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