介護人材確保に向けた介護職員のさらなる処遇改善について

介護職員処遇改善の対象者は?

介護職員処遇改善の対象者

他の介護職員やその他の職種への配分も可能にするなど「柔軟な運用を認めること」を前提にしつつ、「経験・技能のある職員」として基本的には「勤続年数10年以上の介護福祉士」に重点配分する方針です。 対象者については、(同一事業所・同一法人ではない)業界10年以上の介護福祉士なども含める等の意見が出ており、検討が進められています。また、障害福祉分野の人材についても、介護人材と同様の処遇改善を行うことが明記されています。


新しい経済政策パッケージ(抜粋)(平成29年12⽉8⽇閣議決定)

  • 第2章 人づくり革命
  • 5.介護人材の処遇改善
  • (具体的内容)
  • 人生100年時代において、介護は、誰もが直面し得る現実かつ喫緊の課題である。政府は、在宅・施設サービスの整備の加速化や介護休業を取得しやすい職場環境の整備など、これまでも介護離職ゼロに向けた重層的な取組を進めてきたところである。安倍内閣は、2020年代初頭までに、50万人分の介護の受け皿を整備することとしているが、最大の課題は介護人材の確保である。介護人材を確保するため、2017年度予算においては、介護職員について、経験などに応じて昇給する仕組みを創り、月額平均1万円相当の処遇改善を行うなど、これまで自公政権で月額4万7000円の改善を実現してきたが、介護人材確保のための取組をより一層進めるため、②経験・技能のある職員に重点化を図りながら、①介護職員の更なる処遇改善を進める。
  • 具体的には、他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう③柔軟な運用を認めることを前提に、介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費1000億円程度を投じ、処遇改善を行う。
  • また、障害福祉人材についても、介護人材と同様の処遇改善を行う。

  • (実施時期)
  • こうした処遇改善については、消費税率の引上げに伴う報酬改定において対応し、2019年10月から実施する。

介護職員処遇改善の目的

介護職員処遇改善の大きな目的は、深刻な人手不足の解消です。

介護関係職種の有効求人倍率(公共職業安定所に登録されている求職者数に対する求人数の割合)をみると、2017年(平成29年)は3.50倍まで上昇しています。全産業の有効求人倍率(1.50倍)と比べると、約2.3倍の高水準です。

また、介護関係職種の有効求人倍率は地域によって大きく異なり、東京都や愛知県などの都市部では特に高くなっています。

職業安定業務統計

注)平成22年度の失業率は東日本大震災の影響により、岩手県、宮城県及び福島県において調査の実施が困難な状況となっており、当該3県を除く結果となっている。
【出典】 厚生労働省「職業安定業務統計」、総務省「労働力調査」

出典:厚生労働省「介護人材の処遇改善について」


前述したように国は介護人材の処遇改善を行っていますが、他産業に比べて介護職員は依然として賃金水準が低い状況です。さらに、介護職員の平均勤続年数についてみても、他の専門職種や産業計と比較して35歳以上になると、勤続年数が短いことがわかります。


一般労働者の産業別賃金水準

一般労働者の産業別賃金水準

【出典】厚生労働省「平成29年賃金構造基本統計調査」に基づき老健局老人保健課において作成。
注1)「きまって支給する現金給与額(労働協約、就業規則等によってあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって支給される現金給与額)」を集計している。
注2)産業別賃金は「100人以上規模企業における役職者」を除いて算出。なお、介護職員には役職者は含まれていない。
注3)介護職員は「ホームヘルパー」と「福祉施設介護員」の加重平均。
注4)一般労働者とは、「短時間労働者」以外の者をいう。短時間労働者とは、1日の所定労働時間が一般の労働者よりも短い者、又は1日の所定労働時間が一般の労働者と同じでも1週の所定労働日数が一般の労働者よりも少ない者をいう。

出典:厚生労働省「介護人材の処遇改善について」


介護職員の平均勤続年数(職種別・年齢別)

介護職員の平均勤続年数(職種別・年齢別)

【出典】厚生労働省「平成29年賃金構造基本統計調査」に基づき老健局老人保健課において作成。
注1)一般労働者とは、「短時間労働者」以外の者をいう。
短時間労働者とは、1日の所定労働時間が一般の労働者よりも短い者、又は1日の所定労働時間が一般の労働者と同じでも1週の所定労働日数が一般の労働者よりも少ない者をいう。
注2)介護職員は「ホームヘルパー」と「福祉施設介護員」の加重平均。
注3)産業計は「100人以上規模企業における役職者」を除いて算出。なお、職種別には役職者は含まれていない。

出典:厚生労働省「介護人材の処遇改善について」


前職の仕事をやめた理由(介護関係職種:複数回答)

前職の仕事をやめた理由(介護関係職種:複数回答)

※前職の職種について「介護関係職種」と回答した人を対象に前職の離職の理由を調査。
【出典】平成29年度介護労働実態調査 ((公財)介護労働安定センター)

出典:厚生労働省「介護人材の処遇改善について」

さらなる処遇改善に期待できる効果

さらなる処遇改善に期待できる効果

今後、政府が示す「経験・技能のある職員」に重点化した処遇改善施策によって、若い職員が将来像を描きやすくなり、人材の新規参入や離職防止につながると考えられています。
他産業や他職種との賃金の差が縮まることで、「自信を持って働くことができる」「多くの潜在介護福祉士が介護現場に戻ってきてくれるのでは」という意見もあります。

しかし、2017年度(平成29年度)の介護労働実態調査結果をみると、介護人材不足の原因は「賃金の低さ」だけではないようです。
前職について「介護関係職種」と回答した人が離職の理由として、「職場の人間関係に問題があった」「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があった」「将来の見込みが立たなかった」などを挙げている割合が「収入が少なかったため」を上回っています。この結果から、理想と現実とのギャップや将来への不安を感じている介護職員の姿が浮かび上がってきます。

また、「介護職員処遇改善加算」は賃金の改善だけでなく、事業所が研修の実施や職場環境の改善などを行うことで、現場の職員がより働きやすくなる制度です。賃金水準アップに加えて、他職種も含めた職員がやりがいをもって長く働ける環境が整うことに期待が寄せられています。



<参考・引用>
厚生労働省
介護人材の処遇改善について
介護人材の処遇改善について(第161回資料2)

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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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