生活保護制度は、生活に困窮している方に、その程度に応じて必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに自立を助長することを目的とした制度です。生活保護を受給している方が要介護状態になった場合は、介護サービスを利用できるのでしょうか。今回は、生活保護法による「介護扶助」について分かりやすく解説します。
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生活保護法による「介護扶助」とは、介護や支援が必要な生活保護受給者に対して、介護サービスや福祉用具の貸与などを提供するものです。
「介護扶助」は、現物給付(サービスの提供)を原則としています。
生活保護を受けている方が、介護や支援を要する状態と認められた場合は、指定介護機関(生活保護法により指定された介護機関)から介護サービスを受けることになります。
「介護扶助」の対象となる方
生活保護受給者であり、介護保険法に規定する要介護状態、要支援状態にある方、または基本チェックリストに該当する状態にある方を対象としています。
40歳以上65歳未満の方は、加齢に伴う16種類の特定疾病により要介護状態または要支援状態と認定された場合に「介護扶助」の対象となります。
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「介護扶助」の給付割合
対象者 | 介護保険資格 | 介護費用負担の割合 | |
65歳以上の生活保護受給者 | 第1号被保険者 | 介護保険 9割 | 介護扶助 1割 |
40歳以上65歳未満の医療保険加入の生活保護受給者 | 第2号被保険者 | 介護保険 9割 | 介護扶助 1割 |
40歳以上65歳未満の医療保険未加入の生活保護受給者 | 介護保険被保険者以外 | 介護扶助 10割 |
<65歳以上で生活保護を受けている方>
介護保険の被保険者となるため、介護保険が利用できます。介護保険料は生活保護費の生活扶助(日常生活の需要を満たすための扶助)から給付されます。
介護サービスを受けた場合は、介護保険からサービス利用費の9割が給付され、1割の自己負担分は生活保護法の「介護扶助」により給付されます。
<40歳以上65歳未満で生活保護を受けている方>
生活保護を受けていても、医療保険に加入している40歳以上65歳未満の方は介護保険の被保険者(第2号被保険者)となります。
特定疾病により介護が必要と認定された場合は、1割の自己負担分が「介護扶助」として給付されます。
しかし、生活保護受給者は国民健康保険の適用から除外されているため、原則として介護保険の被保険者とはなりません。
40歳以上65歳未満の生活保護受給者で医療保険に加入していない方(通称 みなし2号)が特定疾病により介護が必要になった場合は、全額が「介護扶助」として給付されます。
介護サービスを利用したいときは

生活保護を受給している方が介護サービス(介護扶助)を受ける際は、福祉事務所への申請が必要です。
福祉事務所で「介護扶助」が決定された場合は、指定介護機関が介護サービスを提供します。
提供されるサービスは、介護保険の給付対象となる介護サービスと同等のものです。
「介護扶助」の範囲
② 福祉用具
③ 住宅改修
④ 施設介護
⑤ 介護予防(介護予防支援計画に基づき行うものに限る)
⑥ 介護予防福祉用具
⑦ 介護予防住宅改修
⑧ 介護予防・日常生活支援(介護予防支援計画または介護予防ケアマネジメントに相当する援助に基づき行うものに限る)
⑨ 移送費
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家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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