視覚障がいのあるご高齢者への配慮とコミュニケーション

2017/08/31

視覚障がいとは、視力や視野などの視機能が十分でないために、眼が見えない、あるいは見えにくい状態のことです。視覚に障がいがあると日常生活に不自由を感じることがありますが、ちょっとした配慮や工夫で暮らしやすくなります。今回は視覚障がいの基礎知識や視覚障がいのあるご高齢者との接し方、安全・快適に暮らすための工夫について解説します。

視覚障がいとは

視覚障がいとは


視覚障害は、視力をほとんど活用できない「盲(もう)」と視力を活用できる「弱視」に大別されます。WHO(世界保健機関)の定義では、両眼の矯正視力が「0~0.05 未満」を「盲」、「0.05~0.3 未満」を「弱視」と定めています。
ただし、視覚障害の概念は、医学的立場や教育、福祉、社会的立場などによって異なる点に注意が必要です。見えにくいために日常生活に支障をきたしている弱視は、「教育的・社会的弱視」と呼ばれます。最近は、「医学的弱視」と区別して「ロービジョン(低視覚)」と称されることが多くなりました。

日本の視覚障がい児・者の総数は約 31.5 万人と推定されており、年齢階級別では60 歳以上の増加が顕著です。【厚生労働省・平成23年 生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)結果】
また、平成21年の日本眼科医会研究班の報告では、矯正視力 0.5 未満の視覚障がい者数は約 145 万人で、そのうちの約 6 割が65 歳以上の高齢者です。
原因疾患は上位から緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性、黄斑変性で、加齢と関係が深い疾患も並んでいます。【平成17年度研究報告書「わが国における視覚障害の現状」】

視覚障がいのあるご高齢者との接し方

視覚障がいのあるご高齢者との接し方


視覚障がいと一口に言っても「視力が低い」「視野が狭い」「光をまぶしく感じる」「色がわかりづらい」など、見え方や見えにくさは多様です。視覚障がいのあるご高齢者とのコミュニケーションは、状態やご希望などに合わせてとるようにしましょう。ここでは、一般的な接し方のポイントをご紹介します。

具体的な表現で説明する

「これ」「あれ」「むこうの~」「あそこに~」などの指示語や指差し表現は、情報が正確に伝わらないことがあります。説明するときは、「(あなたの)隣に~」「右側に~」のように具体的な表現でわかりやすく伝えましょう。もし会話中に席をはずす場合は、黙ってその場から離れず、戻ってきたときも一声かけるようにします。

視覚以外の感覚を活用する

嗅覚・触覚・聴覚など、視覚以外の感覚も活用しましょう。たとえば何かをすすめる場合は、説明しながら触っていただくと正確な情報が伝わりやすくなります。ご高齢者の手をとって何かに触れていただくことは効果的な方法ですが、驚かせないように声をかけてから触れるようにしましょう。声の大きさや言葉遣いにも気を配り、優しいトーンで話しかけることも大切です。

クロックポジションを利用する

クロックポジションを利用する

ご自身でお食事を楽しんでいただく方法のひとつに、時計の文字盤に見立てた「クロックポジション」があります。テーブル上では、ご高齢者の向こう側(奥)が12時、手前が6時です。献立は「12時の位置に主菜の焼き魚、5時には味噌汁、8時にご飯...」のように説明します。熱いものや汁物などは、触って位置を確認していただきましょう。料理の盛り付けも、お皿を時計に見立てて説明することができます。食事中は実況中継のように説明しすぎず、さりげなく見守ることがポイントです。

ご自宅で安全・快適に暮らすための工夫

ご自宅で安全・快適に暮らすための工夫


視覚障がいのある方は、住み慣れたご自宅でも転倒などのリスクがあるため、安全に暮らせる工夫をすることが重要です。また、適切な補助具や支援機器を使ったり、福祉制度を利用したりすることで不自由さの軽減が図れます。

安全な環境をつくる

転倒予防のために、手すりの設置や段差の解消をします。部屋の配線コードは露出しないようにし、床の上には新聞などを置かないようにしましょう。観音開きの戸棚やドアの半開きも危険です。キッチンでは扇形に開く「ふきんかけ」の使用を控え、床に水がこぼれた際はすぐに拭きとります。

物の置き場所を一定にする

ご家族で物の置き場所を決めておき、使ったら元に戻すようにしましょう。収納の位置を変えた場合はその旨を伝え、ご本人に触って確認していただきます。衣類やタオルなどは重ねて収納せず、引き出しの高さにたたんでから立てて入れると取り出しがスムーズです。

わかりやすい印をつける

点字が読める場合は、日常で使うものに点字を打ったタックペーパーを貼りましょう。点字が読めなくても、市販の凸型テープや輪ゴム等で印をつけることができます。ズボン、下着など前後がわかりにくい衣類には、リボンや糸印をつけると着替えやすいです。最近は、凹凸の印がついたシャンプーや牛乳パックなど、市販のユニバーサルデザイン(※)・バリアフリー商品も増えています。

※ユニバーサルデザインとは、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計(デザイン)を指します。

適切な用具を使用する

遮光眼鏡・単眼鏡・拡大読書器・音声時計・触読式時計などの用具を使うことで生活がしやすくなります。筆記具や調理器具、電卓、タイマー等にも、ロービジョン(低視覚)の方向けに工夫された商品があります。また、家電製品は音声ガイドつきのものが便利です。最近では、視覚的な補助機能がついたスマートフォンやタブレットを使いこなすご高齢者も増えてきました。

部屋づくりの基本についてはこちらをご覧ください。

介護を受ける方もする方も快適に!ご高齢者に適した部屋づくり  



高齢化により、今後も「ロービジョン」の方が増加すると予測されています。たとえ眼が見えにくくなったとしても、なるべくQOL(生活の質)を維持することが重要です。視覚障がいの方を支援する活動として、保持されている視機能を最大限に活用し快適な生活を送れるようにサポートする「ロービジョンケア」があります。医療的・福祉的・心理的など、さまざまな面からのサポートを受けながら「できないこと」より「できること」を増やしていきましょう。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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