日頃から意識しておきたい!ご高齢者の災害への備えとケア

地震や津波、台風などの自然災害が多い日本では、少子高齢化の影響もあり、ご高齢者の被災率が高くなっています。災害時は多くの方が「ご高齢者を支援したい」とお考えだと思いますが、「どんな配慮が必要か分からない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、災害への備えや避難支援のポイント、被災されたご高齢者のケアについてお伝えします。

ご高齢者に必要な日頃の備え

ご高齢者に必要な日頃の備え

家の中の安全対策・心構え

地震が起きたときに家具や家電(テレビ・電子レンジ・冷蔵庫など)が転倒しないように固定しておきましょう。窓ガラスには、飛散防止フィルムを貼る、強化ガラスに替える等の対策が有効です。また、いざという時に安全に避難できるように、通路や出入口には物を置かないようにします。

ご家族とは、安否確認の方法を話し合っておきましょう。携帯電話がつながりにくいときのために、「災害用伝言ダイヤル(171)」や「災害用伝言板」などのサービスがあります。

地域の方との交流・支え合い

日頃からご近所や自治会の方とコミュニケーションを図り、防災訓練に参加しておくことも大切です。また、災害対策基本法により市町村が「避難行動要支援者名簿(ご高齢者など災害時に支援が必要な方の名簿)」を作成しています。この名簿は、要支援者の安否確認や避難支援に役立つ情報を避難支援等関係者(自治会・民生委員・消防機関など)に提供するものです。名簿登録を希望する方は各自治体に問い合わせてみましょう。

備蓄品・非常用持ち出し品の準備

懐中電灯や防災用のホイッスル(少しの息でも音が出るもの)、足のケガを防ぐためのスリッパなどを普段から手の届くところに置いておきましょう。また、ライフラインが止まった場合を想定して「備蓄品」と「非常用持ち出し品」を備えておきましょう。

備蓄品の例
□最低3日分の飲料水(1人1日3リットルを目安)
□食品(保存食やユニバーサルデザインフードなど)
□生活用水
□下着・衣類・使い捨てカイロ
□トイレットペーパー・ティッシュペーパー    

非常持ち出し品の例
□飲料水・食料品
□ヘルメット(防災ずきん)
□常用の薬・おくすり手帳
□ヘルプカード・救急医療情報キット 
□普段使っているもの(入れ歯・老眼鏡・補聴器・杖)
□衣類・ビニールシート(着替えやおむつ交換時に必要)
□衛生用品(マスク・ウェットティッシュ・紙おむつ)
□日用品(タオル・洗面用具・使い捨てカイロ)
□貴重品(健康保険証・通帳・印鑑・現金) 
□懐中電灯・携帯ラジオ(予備電池)    

ご高齢者の避難支援のポイント

ご高齢者の避難支援のポイント

「避難準備・高齢者等避難開始」が発令されたら、避難に時間を必要なご高齢者は直ちに避難行動を開始することが重要です。周囲の方はまずご自身の安全を確保し、ご高齢者に声をかけて希望の介助方法があるか聞きましょう。支援が必要なときは、地域の方や避難支援団体などと協力し、できるだけ複数の人で対応することがポイントです。寝たきりや歩行困難で動けない場合は、背負うか毛布・担架・車いす等を使用して安全な場所へ避難させます。

認知症の方には、簡単な言葉でわかりやすく説明し、優しく手を引くなどの配慮を心がけましょう。目が不自由な方を誘導する場合は、杖を持たない方の手で介助者の腕や手につかまっていただきます。耳が不自由な方には、筆談や携帯電話の画面メモ等で知らせ、緊急時は手を引いて一緒に避難しましょう。

避難場所でのご高齢者のケア

避難場所でのご高齢者のケア


ご高齢者にとって避難場所での生活は過酷で体調を崩しやすく、災害関連死につながる恐れもあります。しかし、遠慮や諦めから助けを求められないご高齢者が少なくありません。ご高齢者の命と尊厳を守るためには、周囲の方のさりげない心配りが必要です。

避難スペース

ご高齢者のスペースは、できるだけトイレに近い場所に確保しましょう。ご高齢者は周囲への遠慮からトイレの回数を減らそうと飲水を我慢してしまい、脱水症状になることが多いためです。周囲の方がトイレに行くときは、ご高齢者に「一緒に行きますか?」と声をかけるとよいでしょう。

体調の管理

治療中の方、体調が優れない方は、早めに医療スタッフへ連絡しましょう。医療的なケアや介護が必要な方は、医療機関や二次避難所(福祉避難所)などへの移送を相談します。
ご高齢者は、生活不活発病(廃用症候群)・エコノミークラス症候群・脱水症・感染症などに注意が必要です。定期的な運動や水分補給、手洗い、うがい等を心がけて病気を予防しましょう。また、ご高齢者は孤立しがちで自覚症状も乏しいため、周囲の方が積極的に声をかけて体調に異変がないか聞くことが大切です。

食事と口腔ケア

避難所の食事は炭水化物(パン・おにぎり)が多く、栄養バランスが崩れがちです。可能であれば、たんぱく質を含む豆類・魚などの缶詰やレトルト食品、栄養補助食品も組み合わせましょう。
水分量が少なく飲み込みにくいパンは、お湯や牛乳、ジュースなどに浸すと食べやすくなります。冷たいご飯は、袋に入れてポットのお湯で温めたり、おかゆ状にしたりするとよいでしょう。誤嚥(ごえん)しやすい方は、食品を袋に入れてつぶす、こねるなどして加工します。

また、誤嚥性肺炎や歯周病などを防ぐためには口腔ケアが欠かせません。歯みがきができない場合は、少ない水でできる「ブクブクうがい」を行いましょう。義歯の状態が悪い場合は、医療スタッフへの相談をすすめてください。



ボランティアとして支援する場合は、頑張りすぎずにバランスを考えながら取り組むことが大切です。ご自身の心身のケアも忘れず、無理をしないようにしましょう。また、ボランティア活動では「手助けしたい」という思いが強すぎて支援者側の価値観を押しつけてしまうケースがみられます。支援者は避難所のニーズや被災された方のことを第一に考えて、自己満足に陥らないように気をつけたいものです。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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