腰を痛めてしまう前に!介護による腰痛の原因と予防・対処方法

腰に大きな負担がかかってしまう日々の介護。とくに腰痛を引き起こしやすいのが、「ベッドから車いすへ」「車いすからトイレへ」などの移乗介助です。今回は、腰痛の主な原因や予防のポイント、腰が痛くなったときの対処法についてお伝えします。

介護による腰痛の主な原因とは

介護による腰痛の主な原因とは


介護による腰痛は、主に筋肉疲労の積み重ねによって起きるといわれています。介護で腰の筋肉を酷使してしまうと筋肉が緊張してこわばり、慢性的な痛みを感じるようになるのです。また、長期にわたって腰へ負担をかけ続けると、何気ない動作が引き金となり急性腰痛症(ぎっくり腰)を発症することもあります。

腰部(首・肩・腕などにも)に負担のかかる姿勢

・前かがみ(前傾姿勢)
・中腰
・体幹のひねり
・長時間の同一姿勢

在宅介護で腰痛を防ぐためのポイント

介助姿勢を改善する

介助者は、さまざまな介護場面で不自然な姿勢になってしまうことがあります。そこで、適切な介護技術を身につけて腰への負担をできるかぎり減らすことが大切です。力任せの介護ではなくボディメカニクスなどを活用し、介助姿勢を改善するようにしましょう。
「ボディメカニクス」について詳しくはこちらをご覧ください。
 http://www.azumien.jp/contents/method/00006.html

適切な福祉用具(福祉機器)を活用する

車いすへの移乗・起き上がり介助・おむつ交換・車いす介助などでは、前傾姿勢にならざるを得ないときも多々あります。また、どうしてもご高齢者を抱き上げなくてはならない場合もあり、介助姿勢の改善だけで腰痛を防ぐことは困難です。

そこで、ご高齢者やご家族の状況・ご自宅の環境などに合った福祉用具も上手に活用しましょう。福祉用具を使用する場合は、福祉用具間の相性(例:ベッドから車いすへの移乗介助には、スライディングボードが適している等)も重要です。導入する前に、福祉用具の組み合わせ(相性)についてもしっかりと確認しましょう。

●腰痛予防に効果的な福祉用具(福祉機器・介護機器)
・スライディングボード
・スライディングシート
・スタンディングマシーン
・持ち手付き補助ベルト
・リフト    など

福祉用具は、介護保険でレンタルまたは購入することもできます。介護保険制度を利用される場合は、ケアマネジャー(介護支援専門員)に相談しましょう。

環境を整える

ベッドや車いすのグリップなどが低すぎると前傾姿勢になってしまうため、高さを調節します。また、狭い場所・滑りやすい場所などでの介助は無理な姿勢になりがちです。部屋や通路等は整理して十分な広さを確保しましょう。段差は可能なかぎり解消し、滑りにくい床材を使用するなどの工夫も役立ちます。
住宅改修費の一部は、介護保険制度で補助を受けることができます。

その他、しっかりと安全確認ができるよう照明は明るくし、足腰を冷やさないために適切な温湿度を保つことや、動きやすい衣服・滑りにくい靴なども腰痛予防に効果的です。

休息をしっかりとる

腰部の筋肉疲労が蓄積することで起きる腰痛を防ぐためには、しっかりと休息をとって疲労を回復することも重要です。こまめに休憩し、十分な睡眠をとるようにしましょう。

腰痛予防の体操を行う

ストレッチを中心とした体操は、腰痛予防だけではなく疲労回復やリラクゼーションの効果もあります。伸ばす筋肉を意識しながら、静かにゆっくりと行うことがポイントです。
入浴中、入浴後や就寝前等に定期的に行うとより効果的ですが、お身体の状況に応じて無理をせず、できるときに気軽に行いましょう。(※腰に痛みがある場合は、医師に相談してください。)

●ご自宅でも簡単にできるストレッチ(一例)

①作業の合間などにできる体操
動かないもの(いす・テーブル・手すり・壁など)を支えにして、太もも(大腿前面)やふくらはぎ(下腿後面)を伸ばします。左右それぞれ20秒ほど・1~3回が目安です。

▼太もも前面

太もも前面ストレッチ

▼ふくらはぎ

ふくらはぎストレッチ

②寝ながらできる体操
仰向けになって両ひざを両手で抱えこみ、背筋を伸ばします。そのまま20秒ほど保ち、ゆっくりと息を吐きながら両ひざを伸ばします。無理のない回数で行いましょう。

寝ながらできる体操

腰が痛くなってしまったときには

腰が痛くなってしまったときには

慢性的な腰痛

・無理な姿勢を避ける
・立ち作業は控えて十分な休息をとる
・腰を冷やさずに温める(入浴など)
・ストレッチ・マッサージなどで腰の筋肉をほぐす
・仰向けに寝るのがつらい場合は、横向きで脚を曲げて寝る

急性的な腰痛

・外出先では安全な場所へ移動し、できるだけ横になる
・横になれない場合は壁に寄りかかるなど楽な体勢をとる
・自宅では柔らかいソファーなどは避け、固い布団にひざを曲げて横になる
・痛むところを冷やす
・腰を回さず、腰の筋肉をできるだけ動かさないようにする
・ストレッチなどの体操はしない


腰を痛めずに質の高いケアを続けることは、介護する方の負担軽減はもちろん、介護を受けるご高齢者の負担や事故リスクの低減にもつながります。腰痛の症状が出てしまう前に、また悪化させないために、ぜひ早めの予防を心がけてください。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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