「認知症によるもの忘れ」と「加齢によるもの忘れ」の違いとは?

2018/03/14

年齢を重ねて「もの忘れが増えたな」と自覚すると、「もしかして認知症では?」と不安になる方は多いのではないでしょうか。実際に、『認知症によるもの忘れ(記憶障害)』と『加齢に伴うもの忘れ』は区別しにくいものです。今回は、両者の特徴や見分けるための目安、注意点などをお伝えします。

認知症によるもの忘れ(記憶障害)

認知症によるもの忘れ(記憶障害)

認知症とは

認知機能(記憶する・言葉を使う・計算するなどの頭の働き)が低下し、およそ6か月以上継続して生活に支障が出ている状態を「認知症」といいます。「認知症」は病名ではなく、原因となるさまざまな病気によって引き起こされた病態のことです。

認知症の原因疾患は大きく分けると、神経変性疾患(アルツハイマー型・レビー小体型・前頭側頭型)、脳血管障害(脳梗塞・脳出血)、その他(頭部外傷・悪性腫瘍・感染症など)の3つに分類されます。

2012年(平成24年)の認知症のご高齢者数は462万人で、65歳以上の方の約7人に1人(約15%)は認知症ともいわれています。(内閣府「平成29年版高齢社会白書」)
認知症によるもの忘れ(記憶障害)は、加齢に伴うもの忘れと異なり、日常生活や社会生活に支障をきたすことが特徴です。


認知症によるもの忘れ(一例)

経験したことの全体を忘れる
「食事をしたこと」「約束をしたこと」など、経験したこと自体を忘れてしまいます。
たとえば、買い物へ行ったことを忘れて、同じものを何度も買ってくるなどです。また、数分前のことが記憶に残らず、同じことを何度も言ったり聞いたりします。話すときは使い慣れた単語が出てこなくなり、「あれ」「それ」などの代名詞を使うことも多くなります。

時間や場所がわからない
「今日は何月何日の何曜日なのか」「今は何時なのか」がわからなくなり、約束した日時や場所を間違えることがあります。

もの忘れの自覚に乏しい
ご本人が「もの忘れをしている」という自覚がないことは認知症のサインです。たとえば何度も同じ話をくり返しても、ご本人はそのことに気づいていません。(ただし、認知症の初期段階では記憶力の低下を自覚して不安を感じる方もいらっしゃいます。)

探し物を「誰かに盗られた」と言う
しまい忘れや置き忘れが増えて、いつも探し物をしたり、外出するときに持ち物を何度も確かめたりします。
お財布や通帳、衣類などを探しても見つからないときは、「誰かが盗った」「誰かが隠した」と人を疑うことがあります。

「取り繕い」がみられる
間違いを指摘すると、話のつじつまを合わせようとしたり、もっともらしい作り話をしたりすることがあります。

「振り向き徴候」がある
ご家族が近くにいる場合、質問に答えるときにご家族の方を振り向いて確認を求める、ご家族に答えを促すなどの「振り向き徴候」がみられることがあります。

加齢によるもの忘れ

加齢によるもの忘れ

生理的なもの忘れ

経験したことの一部分を忘れる
たとえば「朝食で何を食べたか思い出せない」「約束をうっかり忘れてしまった」などです。朝食を食べたこと、約束したこと自体は覚えており、後から思い出すこともあります。
「昔読んだ本の題名が思い出せない」「有名人の名前がなかなか出てこない」など、もの忘れのために生活に支障をきたしていない場合も正常の範囲内です。また、新しいことを覚えることもできます。

もの忘れを自覚している
ご本人は「忘れっぽくなったな」と自覚していて、思い出そうとします。

探し物は見つけようとする
探し物が見つからないときは、ご本人が努力して見つけようとします。

「取り繕い」はみられない
間違いを指摘されても、ごまかす、作り話をするなどの「取り繕い」はみられません。

認知症を疑うサイン

認知症を疑うサイン

認知症の中核症状には、「もの忘れ(記憶障害)」のほかに「見当識障害(時間・場所・人を認識する能力の低下)」や「判断力の低下」などがあります。ここでは、もの忘れ(記憶障害)以外の認知症を疑うサインについてみていきましょう。

見当識障害
・時間や季節の感覚が薄れる
・慣れた道でも迷ったり遠くへ歩いて行こうとしたりする

理解・判断力の障害
・テレビドラマの内容が理解できなくなった
・料理・計算・運転などのミスが多くなった
・新しいことが覚えられない
・質問されたことと違うことを答える
・話のつじつまが合わない

実行(遂行)機能障害
・計画を立てて行動することができなくなった
・長年料理をしてきた方が、段取りよく作れなくなった
・予想外の変化に柔軟に対応できない

人格・感情表現の変化
・以前に比べて頑固になり、周りへの配慮がなくなった
・身だしなみに構わなくなった
・何事にも無関心になり、好きなことにも興味を示さなくなった
・失敗したときに混乱し、イライラしたり不機嫌になったりする
・ささいなことで怒りっぽくなり、ときには声を荒げたり手を出したりする
・不安感が強く、ひとりになると怖がったり寂しがったりする
・気分が沈んで、外出や人とのコミュニケーションを嫌がる
・意欲が低下して、何をするのも億劫がる


見分けるときの注意点

見分けるときの注意点

上記のサインは、あくまでもおおよその目安です。実際に、認知症の症状かどうかを見分けるのは簡単ではありません。

認知症のうち最も多いのは「アルツハイマー型認知症」ですが、ほかにも「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」等の種類があります。なお、「アルツハイマー型認知症」に「脳血管性認知症」が合併している方も多くみられます。
症状の出方や進行の速さ、特徴などは認知症の種類によって異なり、また個人差もありますので注意が必要です。

脳血管性認知症は、記憶障害があっても判断力等は保たれているなど、症状に偏りのあること(まだら認知症)があります。そのため、初期の症状は加齢に伴うもの忘れに見えるかもしれません。
前述のように「もの忘れの自覚に乏しい」ことは認知症の大きな特徴のひとつですが、脳血管性認知症の方は、初期には認知症の自覚があります。ご本人に不安で苦しんでいる様子がみられたら、ご家族や周囲の方が「もしかしたら認知症かもしれない」と疑ってみることが大切です。



認知症は、誰にでも起こる可能性のある病気です。ご高齢の方だけではなく、65歳未満の方も「若年性認知症」を発症することがあります。認知症は、早く気づいて治療を開始することがとても重要です。もの忘れが気になる方は、かかりつけ医や専門医療機関(「もの忘れ外来」など)に相談しましょう。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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