冬の寒さ・乾燥がご高齢者の身体に与える影響とその対策

2018/01/31

冬の寒さや乾燥した気候は、ご高齢者の身体にさまざまな影響を及ぼす可能性があり、感染症や入浴中の事故などの危険性も高まります。今回は、ご高齢者の冬の健康リスクや体調管理のポイントなどをお伝えします。

冬の寒さがご高齢者の身体に与える影響

冬の寒さがご高齢者の身体に与える影響


冬の寒さが本格的になる12月~2 月にかけて注意していただきたいのは、身体の冷えによる影響です。
厳しい冬の寒さは体温を下げ、免疫力の低下を招きます。加齢によりもともと免疫機能が衰えているご高齢者は、冬に感染症にかかるリスクが高まるため、十分な注意が必要です。また、寒さによる身体の冷えは血行不良を招き、肩こりや膝の痛みなども誘発します。

さらに、冬場は心筋梗塞や脳卒中などを起こす方が増加します。心筋梗塞や脳卒中が冬に多い理由のひとつが、「ヒートショック(温度の急変による身体へのストレス)」です。
気温が下がると血管が収縮して血圧は上がり、気温が上がると血管が拡張して血圧は下がります。暖房の効いた暖かい部屋から寒いトイレや屋外へ移動するとき、寒い脱衣室から急に熱いお湯に浸かるときなどの血圧の急激な変動には要注意です。

気をつけたい冬の健康リスクと体調管理のポイント

気をつけたい冬の健康リスクと体調管理のポイント

暖房器具を使う冬は空気が乾燥し、風邪やインフルエンザなどのウイルスが活動しやすい状況になり、乾燥が原因の皮膚トラブルや脱水も多くなります。また、ご高齢者に多い入浴中の事故は冬に多発しています。


感染症

感染症

冬場に特に気をつけたい感染症は、季節性インフルエンザやノロウイルスによる感染性胃腸炎・食中毒などです。季節性インフルエンザは毎年11月下旬~3月頃に流行し、ノロウイルスによる感染性胃腸炎・食中毒は11月~2月頃に多く発生します。

感染症を予防する
ご高齢者はインフルエンザやノロウイルスに感染すると重篤化しやすいので、しっかりと予防をすることが重要になります。ノロウイルスについては、感染力が非常に強く、また感染してもワクチンがなく、治療も対症療法に限られます。石けんを使いしっかりと手洗いすること、人からの感染を予防すること、カキやアサリなどの二枚貝を食べる際は、中までしっかり加熱して調理すること、調理器具等は、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)を用いて消毒することを心がけましょう。

インフルエンザについては、こちらの記事をご覧ください。

ご高齢者は注意が必要!インフルエンザを予防しましょう   

マスクを着用する
口腔内が乾燥すると、のど粘膜の防御機能が低下して感染症にかかりやすくなります。冷たく乾いた外気をそのまま吸い込まないよう、外出時にはマスクを着用しましょう。またマスクの着用は、インフルエンザなどの他人への感染を防ぐ効果もあります。

身体を冷やさない
外出時は、マフラーや手袋、帽子などを着用して身体を冷やさないようにしましょう。吸湿性のよい素材の衣服を重ね着し、こまめに脱ぎ着できるようにしておくこともポイントです。また、身体をしめつける衣類は避けます。お食事では、身体を温める大根や人参、ごぼうなどの根菜類を摂り、体を冷やす夏野菜などを控えめにするとよいでしょう。


脱水症状

ご高齢者は、冬場も夏場と同じように脱水に注意が必要です。乾燥しがちな冬は、吐く息や皮膚から放出される水分量が増加し、汗をかかなくても体内の水分が失われます。そのうえ、こたつやエアコン等の使用によってさらに湿度が下がり、脱水症状を起こしやすくなります。

水分をこまめにとる
冬は水分補給の回数が少なくなりがちですが、脱水を防ぐために、のどが乾かなくても定期的に水分をとることが大切です。大量の水を一気に飲むのではなく、コップ1杯程度の水をこまめに飲むようにしましょう。

室内を適度に加湿する
お部屋の湿度は50~60%が適切です。加湿器を使用したり、室内に洗濯物を干したりして室内を加湿しましょう。洗濯物に扇風機やサーキュレーターで風を当てると、乾燥が早まり部屋干しの臭いを軽減する効果があるほか、空気が循環するため、冷えやすい足元の空気まで暖かくなります。また、部屋干しの臭いには、陽の当たる場所に干すことも効果的です。


入浴中の事故

入浴中の事故

ご高齢者の入浴中の事故は、12月〜2月にかけての冬に多くなる傾向にあります。消費者庁の資料によると、平成27年のご家庭の浴槽での溺死者数については4,804人で、このうちの約9割が65歳以上の高齢者となっています。(厚生労働省・人口動態統計)

脱衣室・浴室などを暖める
温度差による血圧の急激な変化を避けるために、冬場はトイレ、洗面所、廊下なども暖かくしておきましょう。冷え込む朝は、暖房器具のタイマー機能を活用します。入浴前には、小型の暖房器具などで脱衣室や浴室を暖めておくことが重要です。

入浴時は特に気をつける
入浴事故を防ぐために、食後すぐや飲酒後、睡眠薬などの服用後の入浴は避けましょう。また、入浴前後には、水分を補給(コップ一杯が目安)することが大切です。
お風呂の湯温は熱すぎると血圧が高くなるため、41度以下(38~40度)に設定し、お湯に浸かる時間は短め(10分までを目安)にします。ご高齢者は入浴前にご家族に一声かけ、ご家族は「いつもより入浴時間が長い」と感じたらご高齢者に声をかけましょう。


皮膚疾患

加齢とともに皮脂分泌が少なくなり、皮膚の防御機能が低下するため、ご高齢者はさまざまな皮膚トラブルを起こしやすくなります。外気が乾燥する冬に多くみられるのは、「老人性乾皮症(かんぴしょう)」や「皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)」などです。これらの皮膚疾患は、非常に辛いかゆみを伴います。

スキンケアをする
皮膚の乾燥を防ぐために、入浴時は熱すぎるお湯や洗浄力の強い石けん類、ナイロンタオルでのゴシゴシ洗いなどを避けましょう。保湿剤は、入浴後に塗ると効果的です。衣類は肌ざわりのよいものを選び、皮膚に負担をかけないようにします。



冬の厳しい寒さや乾燥による身体への負担は大きく、ご高齢者は体調を崩しやすくなります。脱水症や感染症等の場合、ご高齢者は重症になることも珍しくありません。発熱や食欲の低下、下痢、おう吐などの症状が出たら、早めに医療機関に相談しましょう。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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