ご家族と信頼関係を築くためのコミュニケーション方法 ~介護の仕事に携わる方へ~

介護職には、専門知識や介護技術のほかに高度なコミュニケーションスキルが必要です。ご利用されるお客様だけではなくご家族とも信頼関係を築くために、プロとして求められる「接遇・マナー」を身につけましょう。今回は、社会人としても知っておきたい「接遇・マナー」の基本知識やポイント、具体的な応対例についてお伝えします。

介護現場における接遇の基本

介護現場における接遇の基本


最近では、介護の現場にも「接遇」という言葉が浸透してきました。「接遇」とは、「ホスピタリティ(思いやり・おもてなしの心)を持って接すること」です。

介護施設では、お客様お一人おひとりのニーズや状況、変化に応じた細やかなケアが求められます。お客様やご家族とのコミュニケーションにおいても、マニュアル通りではホスピタリティを伝えることはできないでしょう。

しかし、思いやりの心さえあれば相手が好印象を持つとは限らないのがコミュニケーションの難しいところです。思いやりの心があっても、たとえば服が汚れていたり無表情だったりしたら、相手は不快に思うかもしれません。また、話す声が小さすぎたり口調が強すぎたりしたら、相手は不安を覚えるかもしれません。
思いやりの心は、装いや表情、態度などで表現しないと相手にうまく伝わらない場合があります。「どのようにしたら心地よく感じていただけるか」を考えるときは、このことを念頭に置くことが大切です。

ご利用されるお客様とのコミュニケーションについては、こちらをご覧ください。

お客様との上手なコミュニケーション方法 ~介護の仕事に携わる方へ~  

ご家族への接し方のポイント

ご家族への接し方のポイント

信頼関係の基礎となるのは、身だしなみやあいさつ、言葉遣いなどの「マナー」です。忙しい毎日の中では、このような基本的なことをつい疎かにしがちではないでしょうか。来訪されるご家族は、スタッフの立ち居振る舞いをしっかりと見ています。常に「見られている」という意識を持ち、ご家族と接するときは基本のマナーにホスピタリティを添えましょう。

マナーの基礎知識

・身だしなみ
清潔感のある髪型や服装を心がけ、口臭・体臭にも気を配りましょう。女性は派手すぎないナチュラルメイクを心がけ、長い髪は束ねます。アクセサリー・マニキュア・香水は控えましょう。男性は、不潔な印象を与える無精ひげに注意します。

・あいさつ
初対面のときは自分の名前(フルネーム)と役割を伝えて、きちんとあいさつをします。明るい笑顔と親しみやすい雰囲気も忘れずに添えましょう。ご家族に安心していただくために、できるだけ同じスタッフが応対することも大切です。

・おじぎ
誰かとすれ違うときは必ずおじぎをしましょう。背筋をのばし、首ではなく腰から上体を傾けることがポイントです。女性は両手を前でそろえ、男性はズボンの両脇におきます。会釈(約15°)・敬礼(約30°)・最敬礼(約45°)を適切に使い分けましょう。

・言葉遣い
正しい敬語を使い、言葉遣いには敬意や思いやりを込めます。「食べれる」「起きれる」等の「ら抜き言葉」や幼児言葉、なれなれしすぎる話し方などには注意が必要です。専門用語はなるべく避けて、分かりやすい言葉に言いかえます。クッション言葉(「失礼ですが」「恐れ入りますが」「差し支えなければ」など)も上手に活用しましょう。

信頼関係を築くための具体的な応対例

信頼関係を築くための具体的な応対例

介護サービスの利用が決まったとき

・今までご家族が介護をされていた場合は、ねぎらいの言葉をかけましょう。
「お仕事との両立は大変でしたね」「お身体は大丈夫ですか」など

・介護サービスの利用に負い目を感じるご家族には、心の負担が軽くなるような言葉をかけましょう。
「今は社会で介護を担う時代ですから、ご遠慮なさらないでください」「私たちの仕事ですから、ご心配なさらないでください」など

・最初の面談でご家族とよく相談し、何かあったときの連絡体制を決めておきます。取り決めた内容は日付を入れて記録しておきましょう。
「○○の際にはご連絡を差し上げてもよろしいでしょうか」「○○が私どもの方針なのですが、ご了承いただけますでしょうか」など

電話連絡をするとき

・ご家族の状況を気づかい、一般的な電話のマナーを守りましょう。
「夜分に恐れ入ります」「お仕事中に申し訳ございません」「今お話ししてもよろしいでしょうか」など

・施設からの電話は、ご家族にとって「何かあったのでは?」と不安になるものです。緊急性がない場合は、まずその旨を伝えて安心していただきましょう。
「緊急の要件ではございませんのでご安心ください」「実は○○の件でお電話を差し上げました」など

クレームが寄せられたとき

・クレームを聞くのはつらいものですが、まずは、気分を悪くされてしまったことに対して、謝罪をしましょう。
「そうでしたか。そのようなことがあったのですね。」などと耳を傾け、話をよく聴き、理解をします。

・その場で判断して即答するのは避けましょう。どんな内容であっても上司に報告・相談することが重要です。
「上司に相談して、調査をさせていただきます」「恐れ入りますが、少々お時間を頂戴できませんでしょうか」など



介護サービスが一般のサービス業と異なる点は、お客様やご家族との関係が長期にわたって続くことでしょう。ご家族と確かな信頼関係を築くことは、より質の高い介護サービスの提供につながります。日ごろの会話はもちろん、施設での生活の様子を伝えるお便りやイベントなどを通じてご家族との交流を深めておきましょう。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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