ご高齢者の心身を爽快にする清拭(せいしき)のポイント

2017/05/24

清拭とは、病気やケガなどで入浴ができない場合に蒸しタオル等で身体を拭くことです。全身の清潔を保つとともに、血行促進や安眠などさまざまな効果があります。ただし、清拭はご高齢者と介助者に負担もかかるため、心身の状況をよく観察して無理をしないことが重要です。今回は、清拭の目的や注意点、スムーズに行うための手順をお伝えします。


▼入浴やシャワー浴が可能な場合はこちらをご覧ください。

安全・快適に!ご高齢者の入浴介助のコツと注意点  

清拭(せいしき)の目的と効果

清拭(せいしき)の目的と効果


清拭には、全身を拭く「全身清拭」と身体の一部を拭く「部分清拭」があります。また、状況によって手浴・足浴・陰部浴など身体の一部分をお湯にいれる「部分浴」を行います。

血液の循環を促進する

身体を温めて血行をよくすることが、拘縮(こうしゅく)や褥瘡(じょくそう)、細菌感染の予防につながります。また、腸が収縮する運動、腸蠕動(ちょうぜんどう)を促すため、便秘予防の効果も期待できます。

心身の健康を保つ

肌の汚れや垢、汗を拭き取ることで清潔に保ち、皮膚の生理機能を高めます。また、皮膚や爪の状態を観察して、異常を早期発見することも目的のひとつです。さらに、身体の清潔を保持することは外出や社会活動への参加意欲につながります。

爽快・リラックス効果がある

夏場や汗をかいた時は、部分清拭だけでも爽快感が得られるでしょう。また、適度な力で皮膚や筋肉を刺激することは、同じ体位による苦痛と倦怠感(だるさ)の軽減に有効です。眠れないときは、就寝前の足浴が入眠を促します。(主治医に相談してから行ってください。)

清拭で注意するべきポイント

清拭で注意するべきポイント

体調や皮膚の状態を確認する

事前にバイタルチェックを行います。その日の気温や介助者の体調なども考慮して、「全身清拭」「部分清拭」「部分浴」のなかから最も負担の少ない方法を選びましょう。褥瘡(じょくそう)や湿疹、外傷など皮膚の異常がないか確認することも重要です。

声をかけて同意を得る

ご本人に清拭を行うことを説明し、同意を得てから始めましょう。ご本人の希望にも耳を傾け、ご気分や体調が優れないときは清拭を控えてください。

室温・保温に注意する

室温は25℃くらいに保ち、すきま風が入らないように気をつけます。また、介助者の手も温めておきましょう。寝具や衣類は濡らさないように注意し、身体にバスタオル等をかけて保温に努めます。さらに保温したいときは、蒸しタオルを当てて温めてから拭くと効果的です。

空腹時・満腹時は避ける

体調が変わりやすい食事前後は避け、排泄をすませておきましょう。清拭後は水分補給をしてから、ゆっくりと休んでいただきます。

プライバシーを保護する

羞恥心やプライバシーに配慮して、カーテン・扉などを閉めましょう。また、タオルケット等で肌の露出をなるべく控えます。自尊心を傷つけるような言葉にも注意し、コミュニケーションの場として楽しい会話を心がけましょう。

心身に負担をかけない

疲労軽減のために安楽な姿勢を保ち、手際よく行いましょう。皮膚が弱い方はタオルで強くこすらず、そっと当てる程度で十分です。また、乾いたタオルで水分をしっかり拭き取り、水分蒸発によるエネルギーの消耗を最小限にします。清拭後もバイタルチェックを行い、疲れていないか観察しましょう。

感染予防に努める

蒸しタオルは多め(5本ほど)に用意し、拭く部分を一回ごとに変えることが重要です。とくに目元や陰部などは、一度拭いたタオル面で二度拭かないように気をつけましょう。

清拭をスムーズに行う手順

清拭をスムーズに行う手順


ベッド上で全身清拭をする場合(一例)

【準備するもの】

・蒸しタオル(約50~55℃のお湯か電子レンジで温め、ビニール袋などで保温します。)
・タオル類(バスタオル・乾いたタオル・洗顔用タオル・陰部専用タオル)
・清拭剤(石けん)
・洗面器
・使い捨て手袋
・ビニールシート
・着替え一式      など

【基本的な清拭の順番】

上半身 → 下半身 → 陰部
例:①顔 → ②両上肢(手腕)→③胸部・腹部 → ④下肢(足脚)→ ⑤背部 → ⑥陰部
※ 末梢から中枢に向けて(心臓に向けて)拭いていきます。

①顔
洗顔用タオルで、目頭→目尻へと拭きます。つづいてS字を描くように、額→頬→あごの順番で拭きます。
小鼻や耳(耳介や耳の後ろ)も忘れずに拭きましょう。

②両上肢(手腕)
手首→腕の付け根へ向けて拭いていきます。つづいて指の間・ひじの内側・脇の下を念入りに拭きましょう。

③胸部・腹部
寒くないように下半身をバスタオル等でおおい、首→胸の順で拭きます。
胸部は、鎖骨・胸骨・肋骨などに沿って拭きます。女性は乳房の下側も入念に拭きましょう。
腹部は、時計回りに「の」の字を描くように拭きます。

④下肢(足脚)
上半身はバスタオル等でおおいます。膝を立て、足首→脚の付け根へ向けて拭いていきます。
つづいて膝の裏・足指の間・足裏を丁寧に拭きましょう。

⑤背部・臀部(おしり)
側臥位(横向き)になっていただき、安楽な姿勢を保ちます。腰→肩へ向けて円を描くように拭いていきます。
臀部は外側→内側に円を描くように拭きます。

⑥陰部
陰部専用タオルを使います。デリケートな部分のため、可能であればご自身で拭いていただきましょう。
【介助する場合】
(男性)陰茎→陰のう→肛門の順に拭きます。陰茎の包皮を伸ばし、しわの間の汚れも拭きとりましょう。
(女性)恥骨→肛門へ向けて一方向に拭きます。汚れがたまりやすい大陰唇・小陰唇は丁寧に拭きとりましょう。
※ 汚れが多いときは石けんで洗い、容器に入れたお湯で洗い流します。(陰部洗浄)



使い捨ての清拭用ウェットタオル等を利用すると、介助するご家族の負担を減らせます。一度に全身を拭けないときは、部分清拭(胸・手・足など)を数日に分けて行いましょう。要介護認定を受けている場合は、居宅介護サービス(訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護)を利用して清拭介助を依頼することもできます。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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