ご高齢者の多様なニーズに対応できる「混合介護(選択的介護)」とは?

2018/01/17

介護保険サービスに保険外のサービスを組み合わせて利用することを「混合介護(選択的介護)」といいます。混合介護には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。今回は、政府内でも議論が進められている混合介護についてお伝えします。

混合介護(選択的介護)とは

混合介護(選択的介護)とは

混合介護とは、介護保険が適用されるサービスと適用されない自費サービスを組み合わせて利用することです。一般的に混合介護と呼ばれていますが、明確な定義はなく「選択的介護」という表現が用いられる場合もあります。

現行の介護保険制度では、保険内・外のサービスを明確に分け、利用者と事業者との間の契約に基づき利用者等にサービス内容などを説明したうえで同意を得れば、混合介護の提供が可能です。 しかし、保険内・外の詳細な区分が定められておらず、ルールも保険者ごとに異なっています。また、両サービスは同時・一体的に提供できないため、利便性が低いのが実情です。


保険外サービスの内容例(訪問介護)

・同居するご家族の分の調理、洗濯、買い物
・利用者ご本人が使用する居室以外の掃除
・庭の草むしりや花木の水やり
・ペットの散歩やお世話
・窓拭きや大掃除
・配食サービス
・緊急通報サービス

介護保険内サービス(訪問介護)についてはこちらの記事をご覧ください。

訪問介護(ホームヘルプサービス)で「受けられること」「受けられないこと」


「混合介護の弾力化」について

「混合介護の弾力化」について

政府内では「混合介護の弾力化(介護保険内サービスと保険外サービスの柔軟な組み合わせ)」について議論が交わされています。

現行制度では、保険内・外のサービスを明確に区別する必要があるため、両サービスを同時・一体的に提供できません。たとえば同居するご家族の食事も用意する場合、ご本人の料理を作った後で、ご家族の分を別に作ることになるのです。 「混合介護の弾力化」が実現すれば、ご本人とご家族の料理を一緒に作るなどの同時・一体的提供が可能になると期待されます。


想定される「柔軟な組み合わせ」のパターン

【介護保険内・外サービスの同時・一体的提供】
・訪問介護(ホームヘルプ)において、同居するご家族の分の調理、洗濯などを一緒に行う
・通所介護(デイサービス)において、送迎の前後等に買い物支援、外来診療支援などを行う

【介護サービス価格の柔軟化】
・特定のスキルを持つヘルパーの指名料の上乗せ、繁忙期・閑散期の割り増し・割引など

混合介護のメリット・デメリット

混合介護のメリット・デメリット

介護保険内サービスと保険外サービスを組み合わせることにより、どのような効果が期待できるのでしょうか。また、懸念されることは何でしょうか。ここでは、今後の展望を踏まえながら混合介護のメリットとデメリットを解説します。


混合介護のメリット

混合介護のメリット

多様なニーズに対応できる

団塊の世代が高齢期を迎え、ご高齢者やそのご家族のニーズはますます多様化すると考えられています。

今まで介護保険で対応できなかったサービスを提供できる混合介護は、ご高齢者やご家族のさまざまなニーズを満たすことができるでしょう。今後はインターネットを利用した見守りサービス等のIoTの活用や保険外サービスの充実によって選択肢が広がり、利便性がさらに高くなっていくかもしれません。また、ヘルパーの指名は、技術面やコミュニケーション面での安心につながる可能性もあります。


ご家族の負担を軽減できる

それぞれのご家庭のニーズに合った保険外サービスを利用することで、介護をするご家族の心身の負担を軽くできます。たとえば今まで家事を主に担っていた方が要介護になったご家庭では、ご家族の家事支援サービスのニーズが高いでしょう。

また昨今は、ご家族が介護のために仕事を辞めざるを得ない「介護離職」が社会問題となっています。仕事と介護の両立支援サービスなどを活用すれば、ご家族が仕事に専念する時間を増やすことも可能です。


介護スタッフが働きやすくなる

介護スタッフは、介護保険で対応できない部分を有料でサポートできます。介護保険内・外サービスの併用は、ご本人やご家族の満足度向上とともに、介護スタッフの処遇改善につながると見込まれているのです。

また、もし「混合介護の弾力化」で両サービスの同時・一体的提供が可能になれば、サービス時間の短縮化や業務の効率化を図ることもできると期待されています。


混合介護のデメリット

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保険外サービスの価格が高い

全額自己負担となる保険外サービスは、介護保険サービスに比べて高額です。そのため、混合介護の規制緩和は、介護保険の利用者間の格差を助長するのではないかという意見があります。また、事業者が自費の保険外サービスに偏ってしまい、社会保険制度として公平・公正であるべき介護保険サービスの質が低下する懸念も存在します。


不必要なサービスが提供される懸念がある

厚生労働省は「混合介護の弾力化」の検討における留意点として「利用者の負担が不当に拡大するおそれがないか」「トラブルが生じた際の救済はどうするか」などを挙げています。

混合介護では、保険外サービスの契約を伴います。認知症等で判断能力が低下したご高齢者に、悪質な事業者が必要のないサービスを提供するなどのリスクもあるため、利用者を守る仕組みが必要になるでしょう。


自立支援に逆行するおそれがある

厚生労働省は「介護保険制度の理念である自立支援・重度化防止を阻害するおそれがないか」という点にも留意すべきだとしています。

たとえば家事の代行サービスは便利ですが、ヘルパーがすべて代行することが必ずしもご本人のためになるとは限りません。ご高齢者の心身状況によっては、適度な支援をしながらご本人と一緒に行う方がよい場合もあるのではないでしょうか。保険外サービスの拡充が実現しても、保険内サービスとの組み合わせには、自立支援や重度化防止の視点が重要になるでしょう。



2018年度(平成30年度)からは、東京都・豊島区が「国家戦略特区」の制度を活用して混合介護(選択的介護)のモデル事業をスタートする予定です。

東京都は、ご高齢者やご家族の需要とサービスを提供する効率の両面から、保険内・外サービスをさらに柔軟に組み合わせる選択的介護を検討する意義があるとしています。(参考:東京都福祉保健局高齢社会対策部 「選択的介護」に係るモデル事業実施に向けた基本的考え方)

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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