ご高齢者の食べる能力に合わせた食事とは? 食形態から考える介護食

2017/12/13

前回の記事では、ご高齢者が安全に食事をとるための基礎知識として、摂食(せっしょく)・嚥下(えんげ)について解説しました。今回は前回の内容をおさらいしながら、ご高齢者の食べる能力に合わせた食形態や、より安全に食べるための工夫についてお伝えします。

ご高齢者の食べる機能(摂食・嚥下機能)

ご高齢者の食べる機能(摂食・嚥下機能)

まずは前回お伝えした「摂食」と「嚥下」についておさらいしましょう。


摂食・嚥下とは

「摂食・嚥下」とは、食べ物を見て認識し、口に入れて噛み砕き、ゴックンと飲み込み、食道を経て胃に送り込む一連の動作のことです。

通常、口から入った食べ物は、「摂食・嚥下の5期(①先行期・②準備期・③口腔期・④咽頭期・⑤食道期)」を経て胃へと運ばれます。この一連の動作に支障をきたすことを「摂食・嚥下障害」といいます。

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加齢とともに咀嚼(噛み砕く)機能は低下し、飲み込む力が弱くなるため、ご高齢者には摂食・嚥下障害が多くみられます。また、脳血管障害やパーキンソン病、認知症など、ご高齢者に多い病気も摂食・嚥下障害の原因になります。

摂食・嚥下障害が引き起こす事態は、誤嚥(ごえん)性肺炎や窒息、低栄養、脱水など、ご高齢者にとって非常に危険なものばかりです。


「摂食・嚥下」については前回の記事もご覧ください。

ご高齢者が安全に食事をとるために知っておきたい基礎知識  

摂食・嚥下障害と誤嚥(ごえん)

摂食・嚥下障害と誤嚥(ごえん)


誤嚥(ごえん)とは、飲食物などが気管や肺に入ってしまうことです。

上図のように、気管の入り口と食道の入り口は、ほぼ同じ高さに並んでいます。飲食物が気管に入らず食道に入っていくのは、気管の入り口にある喉頭蓋(こうとうがい)という蓋(ふた)が閉じて、気管の入り口をふさぐためです。
食べ物をゴックンと飲み込むときは、嚥下反射(飲み込みの反射)により、喉頭蓋が閉じると同時に食道の入り口が開いて誤嚥を防いでいます。

しかし、摂食・嚥下の機能低下により嚥下反射がうまく働かないと、誤嚥が生じやすくなります。
気管に異物が入ると、激しいむせや咳き込み(咳反射)が起こるのが通常です。ところが、ご高齢者にはこの咳反射が起きない「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」がみられる場合があります。
ご本人も周囲の方も気づきにくい不顕性誤嚥は、誤嚥性肺炎を招く恐れがあるため注意が必要です。

摂食・嚥下(食べる・飲み込む)の流れは目に見えないことから、機能が低下しても見過ごされがちです。
誤嚥のリスクを伴う食事介助では、摂食・嚥下のメカニズムを理解して、流れをイメージしながら行うことが大切になります。

食べる能力に合わせた食形態

食べる能力に合わせた食形態


誤嚥を防ぐためにご家庭でもできる摂食・嚥下障害のケアとして、食事介助や口腔ケア、嚥下体操等の間接的訓練(食べ物を使用しない訓練)などがあります。
食事介助では、食べる姿勢や介助方法、環境の工夫も必要ですが、ここでは「食形態」についてお伝えします。

摂食・嚥下障害がある場合は、ご本人の食べる能力に合った形態の食事をとっていただくことが重要です。
介護施設では、ご高齢者お一人おひとりの状態に合わせて、食事の硬さや粘度などを調節(普通食・介護食・嚥下食)しています。

ご家庭では、「軟らかくなるまで煮込む」「とろみ調整食品や片栗粉、ゼラチン等でとろみをつける」などのひと工夫をします。また、「ユニバーサルデザインフード(UDF)」や「スマイルケア食」を上手に活用することも方法のひとつです。

ご高齢者が食べやすい食材・料理例

・とろみのあるもの(ポタージュ・シチュー)
・ミンチ状のもの(ハンバーグ・つみれ)
・おかゆ状のもの(おかゆ・パンがゆ)
・プリン状のもの(ムース・卵豆腐)
・ペースト状にしたもの(ペースト状のおかゆ)
・ゼリー状にしたもの(ゼリー・煮こごり)
・口の中でまとまりやすいもの(バナナ・とろろ)
・軟らかいもの(舌や歯ぐきでつぶせる程度)

とろみのある液体はまとまりやすく、咽頭へ流入する速さが遅くなり、誤嚥しにくくなります。水分でむせてしまう方は、お茶や汁物にとろみをつけましょう。ただし、とろみをつけすぎるとかえって飲み込みにくくなり、誤嚥や窒息の原因になる場合があります。ご本人の状態により、とろみの調節が必要です。

ご高齢者が食べにくい食材・料理例

・繊維が多いもの(ゴボウ・れんこん・たけのこ)
・パサパサしているもの(パン・ゆで卵・芋類)
・サラサラしているもの(水・お茶・ジュース)
・ボロボロしているもの(ひき肉・おから・豆類)
・口の中や喉に張り付くもの(海苔・わかめ・餅)
・むせやすいもの(レモン・酢の物・香辛料)
・弾力性のあるもの(タコやイカ・こんにゃく・貝類)
・硬くて噛みにくいもの(肉・りんご・柿)
・液体と固体が混ざっているもの(お茶漬け・味噌汁・果汁の多い果物)
・食材を細かく刻んだ、まとまらず、食塊にならないもの(かまぼこ・千切りキャベツ)

ご高齢者が食べにくい食材・料理例

ご高齢者は、誤嚥だけでなく窒息にも注意が必要です。餅やこんにゃく、パン、カステラなどには気をつけましょう。

また、咀嚼(噛む)機能が弱い方向けの「きざみ食」は、嚥下(飲み込む)機能が低下したご高齢者にとって危険な食形態です。「きざみ食」は口の中でバラバラになりやすく、摂食・嚥下の5期の②準備期に食塊(飲み込みやすいかたまり)にすることが難しいため、誤嚥の危険性が高まります。適度にとろみをつける等工夫をしましょう。

より安全に食べるための工夫

より安全に食べるための工夫

自助具の工夫

誤嚥や窒息を防ぐためには、ご本人のペースでリラックスしながら食事をとっていただくことが大切です。手が不自由な方は自助具を活用し、できるだけ自力で食べられるように工夫しましょう。

曲げて使えるスプーンとフォーク、グリップ付きやピンセットタイプの箸、すくいやすい皿、すべり止めの付いた食器など、さまざまな種類の自助具が市販されています。

食事のペース

食べるペースが速いと、咽頭に食べ物が残留しやすくなり、誤嚥を起こすことがあります。

かきこんでしまう方には小さいスプーンや箸を使っていただき、一口の量を減らすと良いでしょう。
また、タイミングを見てお茶をすすめるなどの工夫をしてみます。ただし、声かけに応じようとして、飲み込むタイミングがずれ、飲食物が気管に流れ、誤嚥を起こしやすくなるので、ご高齢者がゴックンと飲み込むときは、声をかけないように気をつけましょう。

食事の環境

例えばテレビを見ながら食事をすると、食べることに集中できず、誤嚥のリスクが高くなります。食卓を魅力的に整えるなどの工夫をして、食事に集中できる環境をつくりましょう。

認知症の方は、見当識(時間・場所・人を認識する能力)の低下により不安を感じやすいため、座る位置や食器、配膳を毎回同じようにします。また、食品と間違えて誤飲しやすいものは片付けておきましょう。



食材を軟らかくしたり、とろみをつけたりすることで、ご家族と同じメニューをご高齢者も一緒に楽しめる場合があります。毎日の食事作りは、がんばり過ぎないことも大切です。介護を無理なく続けるために、ときには市販の介護食品や配食サービスを利用するのもよいでしょう。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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