ご高齢者が安全に食事をとるために知っておきたい基礎知識

2017/11/22

毎日の食事は、ご高齢者にとって大きな楽しみのひとつです。ご高齢者が安全に食事を楽しむためには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。今回は、摂食(せっしょく)・嚥下(えんげ)障害やご高齢者のお口の特徴、気をつけたい誤嚥(ごえん)性肺炎についてお伝えしていきます。

摂食(せっしょく)・嚥下(えんげ)障害とは

摂食(せっしょく)・嚥下(えんげ)障害とは


私たちが普段何気なく行っている「食事」は、日常生活において「栄養を取り入れる」「味を楽しむ」「コミュニケーションの機会になる」など大きな意味をもつ行為です。しかし、摂食・嚥下障害(口から食べる機能の障害)によって、食事がうまく摂れなくなることがあります。

摂食・嚥下障害の原因となるのは、さまざまな病気や加齢の影響などです。摂食・嚥下障害は、誤嚥(ごえん)性肺炎や窒息、低栄養、脱水など生命に関わる事態を引き起こす恐れがあります。また、食べる楽しみの失うことによるQOL(生活の質)の低下も大きな問題です。

摂食・嚥下のメカニズム

摂食・嚥下のメカニズム

摂食(せっしょく)とは「食べること」、嚥下(えんげ)とは「飲み込むこと」です。
「摂食・嚥下」とは、食べ物を見て、口に入れ、咀嚼(そしゃく = 噛む)して飲み込み、食道を経て胃に送り込む一連の動作のことをいいます。この一連の動作に支障をきたすのが、摂食・嚥下障害です。

「摂食・嚥下」の運動は、下図のように大きく5段階に分けて考えられており、「摂食・嚥下の5期」と呼ばれています。

摂食・嚥下の5期.jpg

口から入った食べ物は、①先行期(認知期)、②準備期(咀嚼期)、③口腔期、④咽頭期、⑤食道期の5期を経て胃の中へと運ばれます。この5期のうち、ひとつでもうまくいかなくなることを摂食・嚥下障害といいます。

摂食・嚥下障害の原因

一般的に、摂食・嚥下障害は単独で起こるものではなく、何らかの病気に付随して起こるものです。
摂食・嚥下障害の原因は、大きく3つに分けられます。

①器質的原因
食べ物(食塊)の通り道の構造などに問題があり、食べ物の通過が妨げられて嚥下できない場合

<原因となる病気>
歯周病、口腔・咽頭の腫瘍(舌がん・咽頭がん等)、食道炎 など

②機能的原因
摂食・嚥下に必要な器官の運動に問題があり、食べ物をうまく送り込めない場合

<原因となる病気>
脳血管障害、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症(ALS)、多発性筋炎 など

③心理的原因
検査などをしても、器質的・機能的な問題が見つからない場合

<原因となる病気>
認知症、うつ病、心身症 など

ご高齢者においては、上記のほかに加齢に伴う摂食・嚥下の機能低下も影響します。

※NPO法人PDNサイト(http://www.peg.or.jp/pdn/)参照

ご高齢者の口腔の特徴

ご高齢者の口腔の特徴


ご高齢者は、加齢とともに嚥下反射(飲み込みの反射)が遅くなり、咳の反射も低下します。また、「のど仏」の位置が下がるため、飲み込むときに「のど仏」が上がりにくくなります。

唾液の分泌量が少なくなることも、ご高齢者のお口の特徴です。唾液が減少すると、「噛む」ことや「飲み込む」ことが難しくなります。さらに、唾液が少ないことでお口の中が乾燥し、口内炎や歯周病などになることも多いです。お口のトラブルによって歯の本数が減ると、咀嚼力(噛む能力)はより低下します。

<摂食・嚥下障害を疑うとき>
(1)むせる・咳き込む
(2)ガラガラ声・かすれ声になる 
(3)ものが飲み込みにくい
(4)口から食べ物がこぼれる
(5)食べ物が口の中に残る 
(6)飲食物が逆流する       
(7)食事に時間がかかる・食後に疲れる      など

摂食・嚥下障害が引き起こす病気のひとつが、誤嚥性肺炎(食べ物や唾液などが誤って気管に入り、一緒に入った細菌が炎症を起こすことで生じる肺炎)です。誤嚥性肺炎は、一度発症すると長期にわたり入院することになりかねないものであり、生命の危険に直結する恐れもあります。

誤嚥性肺炎についてはこちらの記事もご覧ください。

お口の中から健康に!介護予防にも役立つご高齢者の口腔ケア 

誤嚥性肺炎の予防

誤嚥性肺炎の予防


誤嚥性肺炎を予防するためには、適切な口腔ケアや食事の工夫などが必要です。

①器質的口腔ケア
うがいや歯みがき、義歯(入れ歯)の清掃、粘膜や舌の清掃などにより汚れを取り除き、お口の中の細菌を減少させます。

②機能的口腔ケア
舌や顔面の体操、唾液腺マッサージなど、口腔のリハビリテーションにより、お口の機能の維持・回復を図ります。

③食事中の誤嚥予防
ご本人の嚥下能力に合わせて食べ物の形態を工夫したり、食事環境の調整(食べるときの姿勢・食事介助・食前と食後の嚥下体操など)を図ったりします。

口腔ケアや食事環境の調整についてはこちらの記事をご覧ください。

安全においしく!介護初心者のための「口腔ケア」と「食事介助」



摂食・嚥下障害や誤嚥性肺炎は、早めに発見することが重要です。ご高齢者の誤嚥はむせない場合も多く、発熱や体重減少等の症状によって誤嚥していたことに気づくケースもあります。ご家族など身近な方は、ご高齢者のお口や体調の変化に気をつけ、小さな異変でも見逃さないようにしましょう。

次回は、誤嚥の予防、誤嚥の予防方法のうち、食形態の選定についてお伝えしていきます。

ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。
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