介護離職を防ぐ ~仕事と介護を両立するためにできること~


社会の高齢化にともない、ご家族を介護するために離職・転職する「介護離職者」の数が増えています。そして、その多くは40代~50代の働き盛りの方々です。仕事を続けながら介護を行うためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

「介護離職ゼロ」に向けての取り組み

「介護離職ゼロ」に向けての取り組み

2025年には団塊世代が75歳を超えるため、介護離職者は今後も増える傾向が続くと予測されています。管理職などの重要な役割を担う人材が介護離職してしまうことは、企業にとっても深刻な問題です。企業側でも、介護に関する情報提供やセミナーなど、仕事と介護の両立のための支援に取り組み始めています。

仕事と介護の両立をサポートする制度

介護休業

労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するための休業です。
対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。
また、一定の要件を満たした雇用保険の被保険者の方が介護休業制度を利用した場合は、休業開始時賃金月額の67%の介護休業給付金の支給を受けることができます。


介護休暇

労働者が要介護状態にある対象家族の介護や世話をするための休暇です。
通院の付添いや介護サービスの手続き代行、ケアマネジャー等との短時間の打合せなどにも利用できます。
1年に5日まで(対象家族が2人以上の場合は1年に10日まで)、1日単位または時間単位で休暇を取得できます。


短時間勤務等の措置

事業主は次のいずれか1つ以上の制度を設けなければならないことになっています。

・短時間勤務の制度
・フレックスタイムの制度
・時差出勤の制度(始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ)
・労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度

対象家族1人につき、利用開始日から連続する3年以上の期間で2回以上の利用が可能です。


所定外労働の制限(残業免除)

対象家族1人につき、介護の必要がなくなるまで残業の免除を請求できます。 利用期間は1回につき1カ月以上1年以内で、回数制限はありません。


時間外労働の制限

1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働の制限を申請できます。
利用期間は1回につき1カ月以上1年以内で、回数制限はありません。


深夜業の制限

深夜業(午後10時~午前 5 時までの労働)の制限を申請できます。
利用期間は1回につき1カ月以上6カ月以内で、回数制限はありません。


介護が必要になったときには、まずお勤め先に相談してみましょう。介護休業は、パートやアルバイト等の方でも要件を満たせば取得可能です。

介護離職を防ぐためにできること

介護離職を防ぐためにできること

仕事と介護の両立をめざして備える

介護は突然に始まって、いつまで続くか分からないものです。継続的な介護には、心身の負担とともに経済的な負担がかかります。そのため、介護に直面しても離職せずに経済的な基盤を維持し、無理なく介護を続けることが大切です。

また、離職して介護に専念するとかえってストレスがたまり、精神的に追い込まれてしまうケースもあります。一時的にでも介護から離れて仕事に集中することは、介護疲れの慢性化を防ぐためにも重要です。

介護の状況は千差万別で、介護のかたちも同居・近居・遠距離などさまざまでしょう。
親と離れて暮らしている場合は、親の変化にいち早く気づいてくれる方(親の主治医や友人、ご近所の方など)とコミュニケーションをとっておくとよいでしょう。また、近くにある 地域包括支援センター介護保険以外のサポートについて確認しておくと安心できます。


家族でしっかりと話し合っておく

親の老後や介護について気にしつつも「なかなか言い出しにくい」という方は多いと思います。また、親も「心配や迷惑をかけたくない」「自分はまだまだ大丈夫」などと考えて、話し合いを避けてしまうこともあるでしょう。

しかし、もしかすると親と子の考えはそれぞれ異なるかもしれません。親が元気なうちに兄弟姉妹も含めて話し合い、それぞれの考えや希望が分かれば、お互いが納得のいく選択がスムーズにできる可能性が広がります。
「親にはいつまでも元気に幸せでいてほしい」と願うからこそ、ご家族と楽しい時間をできるだけ共有しながら、将来についても話し合っておくとよいでしょう。


介護に関する情報を収集しておく

親の介護は、誰にでもいつかは起こりうる問題です。親の老いを受け入れるのは辛いことでもありますが、突発的に介護が必要となり、仕事との両立が困難になることも考えられます。

介護に直面したときに慌てなくてすむように、少しずつでも介護に関する有益な情報を集めておきましょう。事前に心構えをしておくことは、介護の不安解消にもつながります。


<「仕事と介護の両立」に関する情報提供サイト>

介護離職ゼロ ポータルサイト(厚生労働省)

介護休業制度 特設サイト(厚生労働省)


仕事と介護を両立するためのポイント

仕事と介護を両立するためのポイント

孤立せずに周囲と連携をとる

「周囲に迷惑をかけたくない」「誰かに知られたくない」などの思いから孤立してしまうと、負担が増えて仕事を辞めざるを得なくなるかもしれません。また、「すべて自分でがんばろう」と無理を続けてしまうと、心身の不調に陥る可能性もあります。

仕事と介護を無理なく両立するためには、ご自身やご家族だけで抱え込まずに周囲と連携をとることが大切です。介護サービスのほか、勤務先や民間団体、ボランティアなどのサポートも上手に活用して、できるだけ負担を減らしていきましょう。


家族で介護予防に取り組む

介護を防ぐだけではなく、要支援・要介護の状態になった場合でも、重度にならないように意識することが大切です。

地域全体でも介護予防教室の運営や社会参加の支援などを行って、介護予防に取り組んでいます。ご家庭でも健康づくりを心がけ、現在の心身の機能を可能なかぎり維持・改善するようにしましょう。



仕事と介護を両立するためには、ご自身の健康も考えて息抜きをすることも必要です。介護の悩みや不安がある場合は、ケアマネジャーなどの専門家に気軽に相談してみましょう。


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ライター:樋口 くらら
家族の介護をきっかけに介護福祉士・社会福祉主事任用資格を取得。現在はライター。日々の暮らしに役立つ身近な情報をお伝えするべく、介護・医療・美容・カルチャーなど幅広いジャンルの記事を執筆中。

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